この政略結婚に、甘い蜜を
家から車で二時間ほどかけて到着したのは、自然に囲まれたのどかな場所だった。辺りには山が広がり、湖では水鳥たちが楽しそうに泳いでいる。

「ここが、零さんが式を挙げたかった場所……」

自然に囲まれた中に建てられた結婚式場はまるで雪のように白く、その外壁にツタが生えている。落ち着いた式を挙げたい人にはとても理想的な結婚式場だろう。

「ここなら誰にも邪魔されることはないだろうって零が嬉しそうに言ってたよ」

龍羽がそう言って微笑み、手を差し伸べる。その手を取りながら華恋はゆっくりと階段を上り、結婚式場のドアを開けた。

「お待ちしておりました、鍵宮様ですね。本日はお越しくださいまして、ありがとうございます」

制服を着こなしたウェディングプランナーが深々と頭を下げる。少し戸惑う華恋の隣で龍羽は余裕そうに笑みを浮かべ、「電話でご相談した通り、サプライズをしたいと考えていまして……」と結婚式のことを話し始める。
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