この政略結婚に、甘い蜜を
13、すれ違い
車の中は重い空気に包まれていた。華恋は謝らなければと口を開くも、零を纏う空気が何も話すなと命じているように思えてしまい、喉元まで出かかった言葉は奥へと引っ込んでしまう。

そんなことを繰り返しているうちに、いつの間にか家へと着いていた。車が駐車場に入れられてすぐ、華恋は腕を掴まれて強引に車から降ろされる。

「零さん!」

華恋が勇気を出して口から言葉を発したものの、零の表情は何一つ変わらない。強く腕を引っ張られたまま家の中へと連れ込まれ、廊下を歩いていく。腕に痛みが走り、華恋は振り解こうとしたものの、逃げられなかった。

「零さん!話を聞いてください!」

「今の君と話すことは何もないよ」

ようやく零は口を開いた。零はドアを開ける。そこは二人の寝室だった。

華恋の体が零の手によって押され、倒れる。幸いにもベッドの上に倒れたため、痛みなどはなかった。だが、倒れた華恋の体の上に零が乗り、逃げ道を塞がれてしまう。
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