この政略結婚に、甘い蜜を
「きゃあッ!」

華恋が悲鳴を上げると、零は楽しそうに体のラインを指でなぞる。それにびくりと反応すると、零はニコリと笑って言った。

「子ども、作ろうか」

「えっ?」

意味がわからず、華恋は反射的に聞き返してしまう。そんな華恋の頬を愛おしげに零は撫で、「子ども作ろうよ」と再度言う。

「僕との赤ちゃんが華恋のお腹に宿ったら、もう華恋と兄さんは結ばれることはできない。華恋は自由にあちこち行けなくなるし、最高の選択だと思わない?」

「違います!私はお義兄さんのこと、好きでも結婚したいとも思っていません!」

恐怖を感じていても、好きなのは零だ。華恋はすぐに否定する。だが、零は聞こえないかのように話を続けた。

「僕ね、探偵に二人が結婚式場にいることを伝えられた時、華恋のことを鎖で縛ってこの家に閉じ込められたらって本気で思ったんだ。だけどそんなことをしたら、華恋の好きな仕事も、僕とのデートもできなくなる。それは嫌でしょ?」
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