この政略結婚に、甘い蜜を



外されたブラウスのボタンをもう一度止めて、華恋は涙を拭いながら外へと出る。もう外はすっかり暗くなっていた。街頭の明かりが微かに夜道を照らす中、華恋は泣きながら走っていく。

目的地などはない。ただ悲しく、苦しく、零に対する想いや罪悪感が胸を締め付け、走っていないと心がどうにかなってしまいそうだった。

「……ハァハァ」

息が切れて華恋は足を止める。色んな感情のせいで涙が止まらない。勢いよく走ったせいで足が疲れてしまい、華恋はどこかフラフラとした足取りで近くにある公園へと入り、ベンチに腰掛けた。

「零さんを怒らせて、傷付けてしまった……」

最初からサプライズなど言わず、素直に気持ちを伝えてしまえばよかったのかもしれない。後悔が一気に押し寄せ、嫌われてしまったかもしれないという不安が生まれてしまう。

「どうやって謝ったらいいの?」

家族や友達と喧嘩などほとんどしたことがない。喧嘩になりそうになるといつも華恋が折れていたため、どうすべきかがわからない。
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