この政略結婚に、甘い蜜を
「スマホ、家に置いて来ちゃった……」

仲直りする方法を調べようと思ったのだが、スマホを家に忘れて来てしまった。だが、零と顔を合わせるのが気まずく、家に取りに帰りに行こうと思えない。

「どうしよう……」

華恋は今、スマホどころか財布すら持っていないため、ホテルに泊まることすらできない。実家まではここからはかなりの距離がある。

「私の馬鹿……」

自分自身に呆れてしまい、ため息が出る。スマホもなく、さらにお金も持っていないのならばもう嫌でもあの家に戻るしかない。

「……普通に「ごめんなさい」って言えばいいのかしら?それで許してもらえるものなの?」

世の中には謝って許されないことの方が多い。特に大人になれば尚更だ。零は浮気をしたと思い込んでしまっている。浮気は決して許されない。

満月が優しく公園を照らす。夜風が、まるで華恋を慰めるかのように優しく頬を撫でていく。華恋はしばらく迷っていたものの、ゆっくりと立ち上がる。いつまでもここにいるわけにはいかない。
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