この政略結婚に、甘い蜜を
14、もう一度、愛の誓いを
華恋が泣きじゃくりながら出て行った寝室で、零は先ほど自分がしてしまったことに体が動かせなくなっていた。華恋を傷付けてしまったことに手が震え、「馬鹿だな、僕……」と薄暗い部屋の中で呟く。

零は初めて会った時からずっと華恋が好きで、彼女の両親に頼み込んで結婚することができた。だが、彼女は自分のことを覚えたなどおらず、政略結婚だと思い込んでいた。

少しでも振り向いて貰いたい、その気持ちで華恋が好きなものを揃え、心の奥底にある華恋の全てを奪いたいという欲望を抑え込んで優しい人であろうとした。

だからこそ、龍羽と一緒に結婚式場にいることを知った時に激しい怒りが込み上げ、止めることができなかった。華恋の言葉を聞くことなく、己の欲望をぶつけようとした。

「もう、華恋が僕に振り向いてくれることはないかな……」

自分を強引に襲った相手を好きになるなど、よほどの奇跡がない限り、ゼロに近いだろう。ここ最近は頬を赤く染めたり、可愛らしい笑顔を向けてくれたのだが、もうその表情はきっと見ることができない。
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