この政略結婚に、甘い蜜を
二人で住むにも広すぎる家には、ゲストルームや零が使うのであろう書斎、そして家具一つ置かれていない空き部屋がいくつかあった。

「この空き部屋は、子供部屋にしたいなと思ってるんだ」

何もない部屋を華恋が見ていると、零が話しかけてくる。突然声をかけられ、華恋はびくりと肩を震わせた。

「子ども……」

零が会社を引っ張っていっても、それも永遠ではない。後継者がまた必要になる。そのために華恋は子どもを産む必要があるのだと、自身のお腹にそっと手を当てた。

(この人とああいうことをしないといけないの?)

子どもはコウノトリが運んでくる、キャベツから生まれる、などファンタジーな方法では生まれない。当然、大人である華恋はそれを理解してはいたものの、零が自分を組み敷く姿を想像すると、体が震えてしまう。

(好きでもない人と、そんなことをしないといけないの?私は子どもを産むための道具なの?)

部屋を見て回って、華恋は最悪なことを気付いていた。子供部屋として使う空き部屋はいくつかあるが、夫婦の寝室が一つしかないのである。
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