この政略結婚に、甘い蜜を
「兄さん、結婚式場ではごめん。ありがとう」

そう言い、零は電話を切る。華恋を探すために急いで外へと飛び出した。華恋はスマホを家に置いて出て行ってしまったため、走り回って探すしかない。

「華恋……!」

近所をぐるりと走って回る。息が乱れ、心臓がバクバクと音を立てたが、足を止めることはできない。そして、公園に辿り着いた時に華恋の微かな声が耳に届いた。数人のガラの悪そうな男性に取り囲まれ、襲われそうになっている。

「その人は僕の妻だ!返してもらう!」

一人を殴り付け、零は叫ぶように言った。



夜の公園に緊迫した空気が張り詰める。男性たちと零は睨み合い、華恋はその様子を息を飲んで見つめていた。

(零さん、私を探してくれていたの?)

嫌われてしまったと思っていたため、華恋の中に喜びが生まれていく。こんな状況だというのに、華恋の胸は微かに高鳴っていた。だが、不安の方が大きい。

(零さんから、格闘技を習っていたなんて聞いたことがない。この人たちと戦えるの?)
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