この政略結婚に、甘い蜜を
「あの、ご飯を作らせてしまって……」

「そんなこと?気にしなくていいよ。これから家族になるんだし、助け合いは当たり前。さあ、食べよう!」

この家には、実家にいたような使用人はいない。だが、華恋は家事を一通り教えられていたため、全ての家事を自分が行うつもりで暮らしていた。だが、気が付くと零がやってくれている時がある。

「今は女性も働く時代。なら、僕たち男も家事や育児をするのが当たり前にならないとダメでしょ?」

そう言い、由緒正しき家の御曹司とは思えないほど、完璧に洗濯も掃除も料理もこなしてしまう。

優しく、家庭的な素敵な旦那だとこれを見れば誰もが思うだろう。しかし、華恋は喜ぶことができないのだ。

『面倒くさいから、優しくするんや。勝手に勘違いすんな、キッショいな』

過去に言われた言葉を思い出し、目の前で微笑む零の優しさは好意からしてくれるものではなく、自分でした方が早いからなのではないかと疑ってしまう。そして、悲しくなっていくのだ。

「華恋、味どう?」

「おいしいです」
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