この政略結婚に、甘い蜜を
朝ご飯を食べている時、華恋が話したのは「いただきます」と「おいしいです」、そして「ごちそうさま」だけだった。



ご飯を食べ、食器を洗い終わったら、出かける支度をしなくてはならない。華恋はクローゼットを開け、適当に服を選ぶ。花音のようにおしゃれなお出かけ用の服など持っていないため、普段着と何ら変わらない。

シンプルな白のトレーナーの上にブラウンのカーディガンを着て、黒いパンツを履く。髪を櫛でとかし、軽くメイクをしたら準備は終わりだ。花音のように髪型をこだわったり、メイクにこだわったりはしない。自分には似合わないと思っているためである。異性とデートをするなど生まれて初めてなのだが、準備にかかる時間はいつもと変わらなかった。

「あれ、もう少しゆっくりでもよかったんだよ?」

中高生でも買えるような安いブランドのバッグを手にリビングに行くと、零は少し驚いていた。そんな零に対し、淡々と華恋は口を開く。

「妹のように可愛い服は似合いませんから。おしゃれな服やバッグがあっても、私が身に付けるには相応わしくありません」
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