この政略結婚に、甘い蜜を

華恋がそう俯きがちに言うと、いつの間にか近くに零がいた。そして優しく肩に触れられ、「そんなことないよ」と言われる。

「華恋は素敵なレディーだよ。似合わないなんてことない。今日は、華恋に自信を持ってもらうために「買い物に行こう」って誘ったんだ」

手を引かれ、華恋はスニーカーを履いて零の高級車に乗せられる。そして、たくさんのおしゃれなお店が並んだ場所に連れて行かれる。

「華恋はこういう可愛いものが似合うと思うんだ」

ショーウィンドウに飾られた服を指差しながら、零がニコリと笑う。そんな零を見て、多くの女性たちが頬を赤く染めながら零をチラチラ見ていた。

グレーのテーラードジャケットを黒いモックネックの上に羽織り、デニムパンツに白いスニーカーという高級感を全く出していない格好でも、華やかな顔立ちのおかげで俳優が街を歩いているような印象を受ける。

「あの人、どこの俳優さんかな？」

「かっこいいよね〜！」

「隣にいるのって恋人？」

「んなわけないでしょ！あんな地味なの、マネージャーか付き人に決まってんじゃん！」