この政略結婚に、甘い蜜を
「あの、全部買っていただかなくても……。というか、お金……」

真っ青な顔をする華恋は、最初に着た白いリボンのついたワンピースを着せられている。零に、「この服でデートしよう」と言われたからだ。

「気にすることないよ。大切な人には、可愛くて素敵なものを身に付けておいてほしいでしょ?せっかく可愛いんだから、もっと自信を持って。ほら!」

華恋が零に言われて顔を上げれば、顔を赤く染めた女性たちがまた話しているのが見える。認識すれば、嫌でも声が耳に入った。

「あの二人、カップルかな?」

「彼氏さん、すごくイケメン!女の子も可愛いよね〜」

「ああいうのを、お似合いって言うんだよね」

先ほどは、どこか軽蔑するような目ばかりが華恋に向けられていた。だが今は、先ほどのことが嘘のように羨望の眼差しで見られている。

「よし、この調子でどんどん可愛くなろう!」

零は華恋の手を引き、有名なブランドのお店に入っていく。そこには、可愛らしい財布やバッグがたくさん並んでおり、固まっている華恋の横で店員と零が何かを話し始める。
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