この政略結婚に、甘い蜜を
3、拒んでしまった誓い
結婚する前のカップルというものは、きっと蕩けてしまいそうなほど甘い雰囲気に包まれ、家族になる日を楽しみに待っているのだろう。

だが、華恋には「結婚する」という喜びは一切ないまま、零と同じ家で暮らしている。

「もうすぐ結婚式だね、楽しみだな」

零の方は何故か嬉しそうにニコニコと笑っており、華恋は曖昧に頷くしかできない。ただ、心の中には虚しさだけが広がっている。

(もう周りから結婚をもう急かされることがないから、きっとこうして喜んでいるんだよね)

そして迎えた結婚式の日は、雲一つない綺麗な青空が広がっており、よい結婚日和と言えるだろう。

花嫁は準備に時間がかかるため、先に式場に行かなければならない。朝の八時頃、家に両親と花音の乗った車が迎えに来た。

「華恋のウェディングドレス姿、楽しみにしてるよ。先に行ってて」

頬を赤く染め、幸せいっぱいと言いたげな表情を見せる零に見送られ、華恋は車に乗り込む。父親はモーニングコートを、母親は黒留袖を、花音は薄い黄色のセミアフタヌーンドレスを着て、ニコニコと微笑んでいる。
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