この政略結婚に、甘い蜜を
「お姉ちゃん、結婚おめでと〜!ブーケは私に頂戴ね?」

花音は嬉しそうに笑い、両親は「華恋が結婚するなんて……」と泣き出しそうな顔をしている。だが、この結婚の話を持って来たのは両親のため、華恋はモヤモヤした気持ちだった。

「零くんが花籠家に入ってくれるんだから、もうこの家は安泰だな」

「そうね、きっと零くんなら華恋を幸せにしてくれるわ」

両親と妹が盛り上がる中、華恋は一人無言で窓の外をボウッと見つめていた。とても、結婚式を迎える花嫁とは思えない。

だが、三十分ほど車に揺られて結婚式場へ着いた時、華恋の表情に驚きが現れる。

「ここって……」

華恋の目の前には、ヨーロッパにあるお城を思わせるような美しい結婚式場があった。まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようで、華恋の胸がドキドキと音を立てる。

「お姉ちゃん、ここで結婚式挙げたいって昔言ってなかった?鍵宮さんにそのこと話したら、すぐに予約してたよ」
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