この政略結婚に、甘い蜜を
華恋の脳裏に修学旅行が浮かぶ。修学旅行で泊まったホテルもこのような高級ホテルだった。友達やクラスメートたちはリラックスした様子で過ごしていたものの、華恋だけは緊張して逆に疲れてしまった。家族で泊まる旅館やホテルは高いところではないからだ。

「あ、あの、私……」

別のところに泊まります、と華恋が言おうとすると零に「ダメ」と言われて手を掴まれる。

「海外だと治安が心配だからね。こういうホテルの方が安全だと思うよ」

「で、でも……」

華恋はチラリとホテルの方を見る。ギラギラとしたオーラを感じ、華恋のお腹の奥がギュッと痛くなってしまう。

「うっ……」

圧力に倒れそうになった華恋を、零は素早く抱き止める。

「倒れたら大変だし、とりあえずロビーに行こう」

零の声は、有無を言わせないもののように聞こえた。華恋の体はふわりと抱き上げられ、荷物も奪われてしまう。抱き上げられていると気付いた時、当然華恋の中には羞恥心が込み上げ、顔が赤く染まる。
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