この政略結婚に、甘い蜜を
華恋は体が沈んでしまうほど柔らかなソファーに降ろされ、零が「荷物を預けてくるよ」と華恋に目線を合わせながら言う。

「あっ、お願いします……」

「体調は大丈夫?もし具合が悪いなら、今日はもうホテルで休む?」

心配げに言われ、華恋は首を横に振って「大丈夫です!観光に行きましょう!」と言う。豪華なホテルにずっといるより、観光をして方が気が楽である。

「そっか。なら、少し待っててね。観光楽しみだ」

零はニコリと笑いかけ、フロントでホテル従業員と話して荷物を預ける。ネイディブかと思うほど流暢な英語で話す姿を見て、華恋は「愛があったとしても、釣り合わないよね」と呟く。

零は鍵宮グループの次男、華恋は成金。零は英語を話せるが、華恋は少ししか話せない。零はカリスマ性があるが、華恋にはない。零は華恋にはないものをたくさん持っている。

『お前みたいな成金、俺と釣り合うわけないやろ!』

この呪いは解けることがない。いつまでも華恋に絡み付き、傷付けていく。
< 50 / 186 >

この作品をシェア

pagetop