この政略結婚に、甘い蜜を
「教えて」

華恋を見つめる零の瞳はとても真剣なもので、嘘をつける雰囲気ではなかった。華恋は零から目を逸らし、緊張を覚えながら口を開く。

「私たちは政略結婚で、普通の夫婦みたいな愛ってないんですよね?」

「政略結婚?僕たちは恋愛結婚でしょ」

零が驚いたように否定し、華恋の口から「えっ!?」と大きな声が出る。華恋の記憶では、誕生日に突然夫になる人として紹介されたのが零だった。だから、愛どころか恋すら零には抱いていない。

そのことを零に告げると、「そっか、まあよく考えれば覚えてないよね」と寂しそうにする。その言葉に華恋は疑問を感じた。

「私たち、どこかで会ったことがあるんですか?」

零は大きく頷き、華恋の手を引いてソファに座らせる。華恋の隣に零が座り、二人が初めて会った日のことを教えてくれた。







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