この政略結婚に、甘い蜜を
それに気付いてからは、零の気持ちはどんどん冷めていき、パーティーも楽しめなくなった。胸元を開けたドレスを着て、気分が悪くなってしまうほどの香水の匂いを纏った女性が群がるためである。だが、鍵宮グループの御曹司となれば、出席しないわけにはいかない。

「ハァ……。行きたくないな……」

ため息をつきながらスーツを羽織る零に対し、「ため息をつくなよ」と龍羽が横から言う。

「こういう家に生まれたら、変に注目されてしまうのは仕方ないんだよ。諦めた方がいい」

龍羽はそう言い、パーティーホールへと先に行ってしまう。零は再びため息をつき、重い足を引きずるように歩きながら大人の嘘が渦巻くパーティーホールへと歩く。

シャンデリアが輝き、有名な音楽隊が楽器を奏でるパーティーホールに一歩でも零が足を踏み入れれば、美しく着飾った零と同い年くらいの女の子が群がってくる。

「零くん、そのネクタイって××のですわよね?とてもセンスがいいわ〜」
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