この政略結婚に、甘い蜜を
「そのヘアセット、とても素敵です!よろしければ私とお話ししませんか?」

「零さん、あちらに零さんのお好きなローストビーフがありますの。取って参りますわね」

「零さん、鍵宮グループがまた事業を大きくしたと聞きましたわ。さすが鍵宮グループですわね」

明らかに媚を売っているとわかるような態度と無理やり作っているのであろう高い声に、零は気分が悪くなってくる。チラリと遠くを見れば、龍羽も零と同じように女性に囲まれていた。それほど、鍵宮グループの名前は大きいのだ。

女性に囲まれている息子二人を見て、シャンパンを片手に持った他の会社の社長が零と龍羽の父親に「すごいですね」と声をかける。

「うちの息子はあんなにモテませんよ」

「やはり、鍵宮の息子さんだからですね」

「あの中にいる誰かと結ばれたりして」

この中の誰かと結ばれる?ふざけるな。そう零は怒鳴りたくなった。今でも怒りを必死に抑え、笑顔を何とか保っているのだ。

(こんな馬鹿な女と結婚?死んだってごめんだ)
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