この政略結婚に、甘い蜜を
華やかな世界で生まれ育った女はプライドがみんな高く、ブランド品を全身に纏い、自分の家より格が上の家に必死で媚を売る。その様子を見て、零は「馬鹿だよな」と心の中で毒を吐き続けてきた。

女の子から貰ったプレゼントや手紙はいつも見ることなく捨て、パーティーでは誰からの誘いも取らず、自分の欲を満たしたい時にだけ彼女たちを利用する。昔の零はそんな最低な男だったのだ。

「ごめんなさい、少し外させて」

女の子たちからの媚に耐えられなくなり、零は外の空気を吸おうとパーティーホールから逃げるように去る。パーティーホールを一歩抜ければ、パーティーホールには吹くことのない涼しい風が吹く。その風に触れると、零は自由になれたような気がするのだ。

「戻りたくないし、庭を適当に歩いていよう」

夜の庭にいる人間はいない。みんなパーティーを楽しんでいるのだ。遠くから談笑する声や音楽が聞こえてくる。

「全く、あんなパーティーの何が楽しいんだか……」
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