この政略結婚に、甘い蜜を
幼い頃、パーティーを楽しんでいた自分のことを零は軽く憎んでいた。パーティーホールを睨み付け、零は庭を歩き出す。
白いバラと赤いバラが咲き乱れる庭は、まるで迷路のように広い。そして静かだ。零の荒ぶった気持ちが落ち着いていく。
「……普通の家の子どもに生まれてたらよかったんだけどな」
零はポツリと呟き、白いバラにそっと触れる。棘はすでに庭師によって全て取られているため、零の指を傷つけるものは何もない。
しばらくぼんやりとバラを見ていた零だったが、高い笑い声がふと耳に聞こえて顔を上げる。この庭には誰もいないはずなのだが、笑い声が確かに響いていた。
「誰だよ……」
凪いだ心がまた荒波を立て始める。零は声のする方に向かって歩き出す。声の主は、零のすぐ近くにいた。
ミントグリーンのふんわりととしたドレスを着た十歳ほどの女の子が、美しいバラの花を見てはしゃいでいる。ドレスや身につけているアクセサリーは全てブランドもので、どこかの令嬢だということは一目でわかる。
白いバラと赤いバラが咲き乱れる庭は、まるで迷路のように広い。そして静かだ。零の荒ぶった気持ちが落ち着いていく。
「……普通の家の子どもに生まれてたらよかったんだけどな」
零はポツリと呟き、白いバラにそっと触れる。棘はすでに庭師によって全て取られているため、零の指を傷つけるものは何もない。
しばらくぼんやりとバラを見ていた零だったが、高い笑い声がふと耳に聞こえて顔を上げる。この庭には誰もいないはずなのだが、笑い声が確かに響いていた。
「誰だよ……」
凪いだ心がまた荒波を立て始める。零は声のする方に向かって歩き出す。声の主は、零のすぐ近くにいた。
ミントグリーンのふんわりととしたドレスを着た十歳ほどの女の子が、美しいバラの花を見てはしゃいでいる。ドレスや身につけているアクセサリーは全てブランドもので、どこかの令嬢だということは一目でわかる。