この政略結婚に、甘い蜜を
「零さん、このバラすごく綺麗よ!赤いバラと白いバラしかなかったんだけど、ここに白とピンクが混ざったバラが咲いてるの!」

花びらに複数の色が現れる「複色」のバラは、零も目にするのが初めてで魅入ってしまう。月夜に照らされ、昼間見ても美しいバラは妖艶な空気を纏い、美しさが増しているように思えた。

「……綺麗だね」

ポツリと零が言えば、華恋は無邪気に笑って「綺麗!」と頷く。女の子と関わるのが嫌でパーティーホールから逃げてきたというのに、何故か華恋といることは全く苦痛ではなかった。

「何なんだろうな、この気持ち……」

隣ではしゃぐ華恋を見ていると、胸の高鳴りが止まない。それが「初恋」なのだと気付いたのは、華恋が「そろそろ戻らなきゃ」と言ってパーティーホールに帰って行った後だ。

「嘘だろ、相手は小学生だぞ……」

ダメだ、と思うほどに零の中で想いは募っていく。無邪気な笑顔をまた見たい。そう思ってしまう。しばらく悩んでこう考えた。
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