この政略結婚に、甘い蜜を
それは、零の口から初めて出た愛を伝える言葉だ。零の腕の中で華恋の胸が高鳴る。体がやけに熱く感じ、その頬は赤く染まっていく。

(嘘偽りのない真っ直ぐな言葉……)

彼は嘘をついていない、本気で私のことを愛してくれている。根拠も証拠もない。だが、華恋は直感的にそう感じたのだ。

「これから僕は、華恋に好きになってもらえるようにもっと頑張るよ」

ニコリと微笑まれ、華恋は真っ赤に染まった顔を両手で覆い隠す。鍵宮グループの御曹司に成金娘である自分が愛されているなど、どこの映画の話だろうと恥ずかしくなったのだ。

「隠さないでよ、可愛い顔をしてるんだから」

「そ、それはできません!」

顔を隠しながら広々とした部屋を逃げる華恋を、零は楽しそうに笑いながら追いかけ始める。

こうして、華恋は旦那様に口説かれることになったのだ。








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