この政略結婚に、甘い蜜を
休日の水族館は人で賑わっている。そんな中、芸能人のような華やかな顔立ちをした零は、密かに注目を浴びていた。

「あの人、かっこよくない?」

「でも奥さんがいるみたいだね」

頬を赤く染めながらヒソヒソと多くの女性が話している。だが、零は全く気にすることなく華恋を見つめ、手を差し出す。

「はぐれるといけないから、手を繋ごう」

華恋が零のての上にそっと自身の手を重ねると、自然と指を絡められる。互いの指に嵌められた結婚指輪の感触が伝わり、零は幸せそうに微笑む。その表情を見て、華恋は「こんな人に大切にされているのか」と改めて思ってしまうのだ。

「あそこ、イルカの可愛いオブジェがあるね。写真を一緒に撮ろう!」

零が指差す先には、花で作られた可愛らしいイルカや魚などのオブジェな並んでおり、多くの人が写真を撮っている。

「はい」

華恋がスマホを取り出し、誰かに声をかけようとした。だが、その手を零に掴まれる。
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