この政略結婚に、甘い蜜を
「自撮りしたい。スマホ、貸して?」

自撮りなど、同性の友達としかしたことがない。華恋はドキドキしながらスマホを渡す。

「ほら、もう少しくっついて」

華恋が恥ずかしさから離れようとすると、零に肩を腕を回され、抱き寄せられる。顔が真っ赤に染まった瞬間を写真に収められ、零がニコリと笑う。

「可愛い顔が撮れてよかった」

「あっ、ダメです!消してください!」

華恋が慌てて手を伸ばすも、身長の高い零が持っているスマホに手が届くはずがない。

「スマホ、返してください」

「ごめんごめん」

少し意地悪をされた後、スマホは返してもらえた。そして再び手を繋がれ、二人は水族館の中へと歩き出す。

水族館に一歩入れば、そこには巨大な水槽があり、多くの魚たちが泳いでいる。群れを作って泳ぐ魚たちをジッと見ていると、零が「デバスズメダイっていう魚みたいだね」と水槽にいる魚の種類が書かれているところを見て言う。

「こんなにたくさんいると、どれがどの魚なのか、わからないね」

零が笑いかけ、華恋も釣られて笑う。水槽にたくさん魚がいるのは目で見てわかるが、魚に詳しくない限り、わからないだろう。
< 69 / 186 >

この作品をシェア

pagetop