この政略結婚に、甘い蜜を
華恋が顔を上げて少し微笑めば、困ったような顔をしていた零が少しホッとしたような顔を見せる。すると、コール音が辺りに響いた。零からコール音は響いている。

「華恋、父さんから電話がかかってきちゃった。少し話してくるよ」

電話が鳴っているスマホを取り出し、零は申し訳なさそうな顔をする。華恋は「大丈夫です」と言い、零はレストランから出て行った。

零の姿が見えなくなった後、華恋はコップに入れられた水を一口飲み、息を吐く。そして零が戻ってくるまで暇を潰そうと、スマホを取り出した。刹那。

「ねえねえ、君一人？」

「よかったら、俺らと一緒に回らない？女友達が来る予定だったんだけど、ドタキャンされちゃってさ〜」

二人組の男性が声をかけてきた。二人とも派手なシャツを着て、屋内だというのにサングラスをかけている。柄の悪そうな人たちだ。

「あの、私は人と来ているので……」

ナンパというものに華恋は今まで遭遇したことがない。零と出会うまで、ずっと地味な格好をしていたからだろう。そのため、こういった時にどう対処すればいいかわからず、恐怖が募る。
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