この政略結婚に、甘い蜜を
「ええ〜?連れの人、いないじゃん」

「それは、電話がかかってきたのでレストランの外に行ったんです」

華恋は慌てて行ったのだが、二人組の男性は顔を見合わせてニタリと笑い、華恋の手を掴んで強引に椅子から立ち上がらせる。

「どうせその人、君のことなんて忘れてずっと電話してるんじゃない?」

「そうそう!俺たちが楽しませてあげるから〜」

強い力で引っ張られ、華恋はどこかに連れて行かれるという恐怖から声が出せなくなってしまう。だが、周りを見てもみんな見て見ぬふりだ。絶望から、華恋の瞳に涙が浮かぶ。

「とりあえず適当に回って〜、その後はホテル行こっか」

「最近この辺りで、めちゃくちゃいいホテルできたんだよね」

男性二人に掴まれている手は、華恋が振り解こうとしてもびくともしない。抵抗をするも、華恋の体はどんどんレストランの出入り口に近付いていっている。

(誰か、助けて……!!)

心の中で助けを求めたその時、「何してるんだ!!」と怒鳴り声が響く。その声は零のものだった。だが、怒っている声など華恋が聞くのは初めてである。
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