この政略結婚に、甘い蜜を

支度が終わった後、零の運転する車に揺られて華恋は都内にある高級ホテルへと連れて来られる。ホテルの宴会場を貸し切ってのパーティーらしい。

「行こうか」

「はい」

零が華恋の座っている助手席のドアを開け、手を差し出す。その手を華恋はゆっくりと取り、ホテルの宴会場へと向かう。

シャンデリアがぶら下がり、一流シェフによる料理がビュッフェスタイルでずらりと並べられ、大勢の人たちがお酒の入ったグラスを片手に談笑している。このパーティーに招待された人は、社長や政治家、芸能人など上流階級の人たちばかりだ。

（こんな華やかな場所、私には……）

一気に緊張してしまう華恋だったが、それを察したのか零がそっと華恋の手を握る。それはまるで、「僕がここにいるから安心して」と言われているような力強さがあり、華恋の強張った体を少し解してくれる。

「僕から離れないで」

「はい」

慣れたように微笑む零を見て、多くの女性たちが頬を赤く染める。そして、「こんばんは」と女性たちが話しかけてきた。