この政略結婚に、甘い蜜を
呪いが次々に思い出されていく。それはまるで鋭く尖ったナイフのように、華恋の心を抉り、血が溢れていく。

『こっち見んなや、ブス！』

『お前みたいな女、誰が好きになんねん』

『お前と付き合うとか、死んだ方がマシやな』

「あっ……ああっ……」

白い肌に、鋭い猫目、そして薄めの唇、零とは違う華やかな顔立ちが、すぐ近くにある。それだけで足がすくみ、体が震えていく。

「カレン？大丈夫デスカ？」

エミリーが話しかけてくれるも、華恋は答えることができない。ただ神に心の中で祈り続けた。

（お願い、彼が私に気付きませんように……）

だが、運命というものは常にいたずら付きである。華恋の怯えた瞳と、男性の猫目が絡み合う。目が合ったことで、男性は華恋を認識してしまった。

男性の目が見開かれ、口がパクパク動いている。だが、華恋にはそれを聞き取ることもできない。

（この人にだけは、例え死んでも会いたくなかった……）

華恋の目の前が真っ黒に染まり、体が力を失って倒れていく。誰かが抱き止めてくれたようだが、誰なのかもわからないうちに華恋は意識を失う。

この日華恋は、人生が狂った元凶である五百雀傑（いおじゃくすぐる）と再会してしまった。
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