この政略結婚に、甘い蜜を
「華恋、自分を責めないで。謝る必要なんか一つもないんだよ?」

ふわりと大きな腕が華恋を包む。抱き締められると、零のつけている香水が華恋の鼻腔内に入ってくる。その香水の香りは、華恋の好きなフゼア系のものだ。その香りに包まれると、心が少しずつ落ち着いてくる。

「大丈夫、華恋は何も悪くない。むしろ、華恋が具合が悪いことに気付けなかった僕が悪いんだ」

優しくそう言われ、頭を撫でられた時、華恋の心にあったのは「安心」ではなく、「申し訳ない」という気持ちだった。

決して、具合が悪くなって倒れたわけではない。数年ぶりに訪れるパーティーに緊張こそしていたものの、倒れるようなものではなかった。「初恋の人」があの場にいなければ、華恋は今も宴会場にいただろう。

「今日はもう休もう。この部屋が空いていたから、ここに泊まっていこう。スイートの部屋を取ってあげられなくて申し訳ないけど……」

「い、いえ!スイートじゃない方がいいです」
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