この政略結婚に、甘い蜜を
そんなある日のこと、華恋は授業が終わって家に帰ろうとしたのだが、途中で忘れ物を気付いて急いで取りに戻る。

「早く家に帰らないと、習い事に遅れちゃう……」

焦りながら階段を降りたのがいけなかったのだろう。華恋の足が段を踏み外し、体が大きく揺れる。そして次の瞬間、華恋の体は廊下に叩きつけられていた。

「うっ……痛ッ……」

咄嗟に手で庇ったため、頭は地面に打ち付けずに済んだ。だが、足を捻ってしまったのかジンジンと痛みと熱が走っている。立ちあがろうとしたものの、激しい痛みにより動けない。

「誰か……」

華恋は助けを求めようとしたものの、放課後のためか誰もいない。チクタクと近くにある時計の秒針の音が響く。

時計の針が進むたびに、華恋の心に焦りと不安が募る。このまま自分は家に帰れないのでは、助けてもらえないのでは、思わず泣いてしまいそうになった。

「こんなとこで何しとんの?汚ったい床に座り込んで、邪魔なんやけど」
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