この政略結婚に、甘い蜜を
傑は華恋の前でしゃがみ、くるりと背中を向ける。ブランドの服を着ているからか、彼の背中はどこか眩しい。

「いや、肩を貸してくれたら保健室まで歩くよ?」

この歳になっておんぶは誰でも恥ずかしいだろう。この姿が誰か生徒に見られてしまえば、学校中で噂になってしまう。

「怪我人がちまちま歩いとったら時間かかるやろ!はよ、乗りぃや!」

「いや、大丈夫だから……」

華恋は拒否するも、傑は一歩も譲らない。どれほど「背中に乗れ、乗らない」という会話を続けていただろうか。痺れを切らした傑は、なんと華恋を軽々と抱き上げてしまう。

「えっ!?」

まるで少女漫画のような展開に、華恋は一瞬理解が追いつかなかった。だが、おんぶよりもこの体制の方が恥ずかしいことに気付き、傑に慌てて降ろすように頼む。

「五百雀くん、恥ずかしいから降ろして……!」

「怪我人は黙っときや!」

抱き上げられているため、二人の肌は密着している状態だ。そこからドクドクと互いの早い心臓が伝わってくる。
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