この政略結婚に、甘い蜜を
会話が少しでも弾むたびに、華恋の恋が大きく膨らんでいく。胸の高鳴りを感じていることがどこか幸せで、華恋はこの時間が永遠に続いてほしい、本気でそう思っていた。だが、二人は空き教室についてしまう。

教室は夕焼けに染められて、静まり返っている。オレンジの光が差し込む中、傑は机の上にダンボール箱を置いた。

「よし、これで片付けは終わりやな」

帰ろに、そう言って教室から出ようとする傑の腕を、華恋は掴んでしまう。

「何?」

「……もう少しだけ、お話したい……」

恥ずかしくて普通なら言えないことを、華恋は口にする。文化祭前で気持ちが舞い上がり、何でもうまくいくと思っていたのだろう。

「何でそんなに俺と話したいん?」

傑に少し驚いた顔で訊かれ、華恋は赤く染まった顔を俯かせる。ドクドクと脈打つ心臓の音がさらに大きくなり、声が震えてしまいそうだった。

それでも傑に伝えたいという思いの方が強く、華恋は再び顔を上げる。気が付けば、その言葉は口から飛び出していた。
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