【短編】色褪せない夢
混乱はひとつもおさまらないまま、学校に着いたバスを降りるとまたもや瑞樹に担がれて、冷沙の溜まり場だと言う倉庫にやってきた。
ほぼ、というか100%強制的に。
担がれた私を見たときの、周りの女の子たちの耳をつんざくような、叫泣にも近い悲鳴は、今でもはっきり覚えている。
その時のことだけじゃない、冷沙で過ごした思い出は全部大切だから、
どんなに酷い目に遭わされようと忘れることなんてできなかった。
「じゃあ2週間のお試しやってみる?」
そう提案したのは日向。
課外授業が終わったのが5月下旬で、
そして私が姫になることを受け入れたのは、6月になってからの話。
…思い出すこと自体は別にいいけれど、
あまり気分がいいものじゃないな。
大翔から受け取ったおにぎりを頬張りながら
先程言われた
今度こそ離さないから、一緒に帰ろう」
の答えを探すために、
今日はもう寝ることにした。