【短編】色褪せない夢
あの日のこと
楽しかった思い出がそこで途絶えることになったのは、9月の中旬。
1人の女の子との出会いだった。
「あしたはあんたが憎い」
「あたしはあんたを潰す」
出会い、なんて素敵なものではない。
家に帰る途中ですれ違った初対面の女の子に、そう言われた。
次の日、
「この子を姫にしてあげたいんだ」
そう言って瑞樹が女の子を連れてきた。
「はじめまして、山中 空羽(ヤマナカ ソラハ)です」
深くフードをかぶっていて顔は見えなかったけれど、声だけですぐにわかった。
その子は、昨日すれ違った女の子。
初めて彼女の素顔を見たのは10月になってからのことで、
夢で見たあのシーン。
瑞樹に抱かれた空羽ちゃんは無数の傷でボロボロの姿で、肩を震わせて泣いていた。
一瞬だけ、目が合った。
だけど、その瞳を見てその一瞬でわかった。
「か、れん…?」
「しらばっくれんなよ、お前がやったんだろ」
どうして、なんて言葉にはできなくて、私の言葉に重ねるかのように発せられた瑞樹の声は、これまでに見たことがないくらい、冷たく痛かった。
「風紀を乱す奴はこの場所にはいらない
お前が気安く来ていい場所だと思うな」
汚いものを見るような目の瑠夏は、今でも忘れられない。
「すぅちゃん、、信じてたのに……」
今にも泣き出しそうな日向
日向の頭を撫で、何も言わずに哀しい目をした優雨
返す言葉が、何も見つからなかった。