【短編】色褪せない夢
唇をかみしめて、私の肩を抱く大翔
大丈夫、そう言ってくれているようだった。
「……私はっ、私は、やってない!!」
「お前がそういう奴だとは思わなかった」
幹部室に響いたやっとの思いで絞り出した私の声と
大翔に向けられた瑞樹の哀しい声。
「お前が姫をやめるか冷沙を解散するか」
そんな条件を突きつけられて
私は、たったひとつの居場所を手放した。
倉庫を追い出された日から数日は雨が降っていた。
冷たい雨の中、道ですれ違った彼女は
「っはー、あんな演技に騙されるなんて
全国No2.の暴走族さんもここまでバカだとはね」
勝ち誇った笑顔でわたしを見た。
「お願い、私が消えるから、、
どうかみんなを傷つけないで………」
「裏切られても守ろうなんて
なんで惨めなのかしら。
まあ、あんたが消えてくれるならなんでもいいわ」
そんな花恋との約束で、
私は彼らの前から消えることになった。
花恋を引き取った祖父母が全国No.1暴走族の
バックについていた組とズブズブだったことは、風の噂で知った。
多分、大翔もその事実を知っていたんだろう。
私は大好きな冷沙を守るために、消えることにした。