【短編】色褪せない夢



大翔が帰って2週間。
私はこの地で1人、いつもと変わらない日々を送っている。

携帯も解約したままで、
大学にも通っているし、農業も続けている。



「純恋ちゃん、この野菜お裾分け」
「わ〜!ありがとうございます!!」

「月曜まで雨降るって天気予報で言ってたから気をつけなさいね」
「そうみたいですね、三連休で大学が休みでよかったです」

ご近所さんと軽く会話をしてから
カレンダーに赤丸をしたことを思い出す。


つい頬を緩ませて、自然と口角が上がる。

いつもより多めにご飯を作って、彼の帰りを待つ。

「ただいま、純恋。頼まれてたもの持ってきたよ」
そう言って入ってきたのは大翔。

彼から小さな紙袋を受け取って
「おかえりなさい」
と返す。


あのね、みんな。私にも夢があるんだ。

いつか、私が作った野菜で、料理で、
誰かの笑顔を守りたい。

大学を卒業しても、私はこの地域に残るつもりでいる。

大翔はそれをわかってくれていて、
週末は隣町にある児童施設でアルバイトを始めたという。

紙袋からりんごマークの書かれた小さな箱を取り出して
すぅ、はー、と深呼吸した。



もう1度、大好きなみんなのことを信じたい。

遠く離れていても、心は通じ合えるよね?


箱から出した真新しい形態のセットアップを進めながら小さくつぶやく。



冬になったら、会いにいくから、
だからもう少しだけ、待っててね。




fin.
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