ヒーローが好きな私が好きになった人
「はるき〜! 新商品入ったから買って来たよ〜!」

土曜の夕方、私は帰宅して玄関を開けるなり、靴も脱がずに大声でかわいい私の恋人を呼ぶ。

「りりたん、ちんちょうひんってなに?」

舌っ足らずな声がしたかと思うと、パタパタとかわいい足音と共に私の恋人が現れた。

「ほらっ! ガンクーダンのカード付きラムネ!」

私は得意げにヒーローものの写真が印刷された箱を差し出す。

「ぅわぁ! りりたん、あいがとう」

嬉しそうにお礼を言う春樹(はるき)は私の天使だ。

ま、有り体に言えば、ただの甥っ子だけど。



私は大学を卒業した後、5年余り不動産会社で働いていたけれど、4ヶ月前、突然倒産して無職になってしまった。

雇用保険の失業給付金を貰いながら、のんびり職を探そうと思ったけれど、なかなか再就職先も見つからず、先月から近くの国道沿いのコンビニでアルバイトを始めた。


我が家は本来、両親と私の3人家族。

けれど、今は、二人目を出産した姉が長男の春樹(はるき)を連れて里帰りしているので、倍の6人に増えている。

生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声と元気な春樹の笑い声が混ざってとても賑やかだ。


そして、そんな中で私がはまっているのが、春樹と一緒に毎週見ている、ガンクーダン。

5人組の戦隊ヒーローなんだけど、リーダーのガンクーエースこと龍人(りゅうと)役の前原 央喜(まえはら おうき)くんがイケメンの上に、敵を倒す時のアクションがキレッキレでカッコ良すぎるの!


だから、毎週、春樹とキャーキャー言いながらテレビにかじり付いてるし、こうしてコンビニに新商品が並ぶと、ついお土産に買って来ちゃう。


ただ、自分がはまってるなんて他の人に言ったらオタクみたいで引かれそうなので、あくまで、表向きは、かわいい甥っ子のために買ってあげてる体を装ってるけど。


私は、春樹を膝に抱えて録画しておいた前回のガンクーダンを再生すると、二人で仲良く楽しんだ。

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