ヒーローが好きな私が好きになった人
3日後の夕方、私がコンビニへアルバイトに行くと、見知らぬ男性がカウンターの中にいた。

莉里(りり)ちゃん、今日から働いてもらうことになった笹本 秀路(ささもと ひいろ)くん。いろいろ教えてあげて」

店長にそう紹介され、私は伺うように会釈をする。

店長が事務処理をするためバックヤードに下がると、私は、自己紹介から始めた。

「はじめまして。関本 莉里(せきもと りり)です。平日は、大抵、昼間のパートさんが帰る16時から深夜12時までほぼ毎日入ってます。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします。俺は明日から週3日くらい22時から朝6時まで働かせてもらうことになりました」

元気よく頭を下げる笹本くんは、私より少し若そうに見える。

仕事を教えながら、雑談を交えていると、いろいろ分かって来た。

笹本くんは私より2つ下の25歳。

昼間、別のバイトをしているらしい。

昼間、働いてるのに、夜中に8時間も働いて大丈夫なの?

「昼間のバイトって何?」

私が尋ねると、笹本くんは困った顔をした。

「それはちょっと……。今まで、それを言うと必ず変な視線を浴びたので……」

変な視線?

「なに? 余計に気になるんだけど」

私は食い下がるけれど、笹本くんは、頑として教えてはくれなかった。

なんだろう?
気になるなぁ。



背が高くイケメンの笹本くんは、あっという間に女性客から認知されたようで、週に1〜2度見かけるだけだった女性たちが毎日のように買い物に来るようになった。

不定期に入る笹本くんに会うためには、いるかどうか分からなくても毎日通うしかないってことかぁ。

まぁ、それって、お店のためにはとってもいいことよね。

ただ、笹本くんの前に列ができてるから私が隣のレジを開けて「こちらへどうぞ」と声をかけたのに、恨めしそうに私を睨むのはやめてほしい。

早く会計を済ませるより、笹本くんにレジ打ちをしてもらいたかったのは分からなくもないけど。


「笹本くん、彼女いないの?」

昼も夜もバイトをしているのが気になって尋ねた。

「いませんよ。叶わない夢を追いかけて、フリーターをしてる男なんて、莉里さんも嫌でしょ?」

まぁ、将来の保証がないのは、結婚には不向きよね。

「でも、笹本くんくらいかっこ良かったら、逆に養ってあげる!ってお姉さまとかいそうだけど」

今どき、結婚して養ってもらおうって思ってる女性ばかりじゃない。

「そういう、ヒモみたいなのは俺が嫌なんです。例えバイトでも、俺が生活を支えたいので」

へぇ、意外。

「偉いじゃない。そういう自立した気持ちって大切よね」

素直ないい子だと思ってたけど、ますます好感持っちゃう。
< 3 / 7 >

この作品をシェア

pagetop