願わくば溶けて
「私、こっ、ここの家に住んでてたまたま鍵忘れただけなんです!」
「…… あっ、はっ、はい」
いきなり自分から説明始めたぞ。
「だっ、だから怪しい者ではなくえっと、つっ、通報とかはしないでいただけると助かります ……」
「あっ、はい」
呆気に取られる僕を無視して女の子は半泣きで焦りつつ自分の状況を説明する。
要は、自分が不審者じゃないってことをわざわざご説明してくれているのだろうか。
ありがたいような…… ありがたくないような……
「あの!まだ不審者だと疑われてるなら学生証とかもお見せするので」
んっ!?
「えっ!?いや、それはいいです!」
いきなり鞄から学生証を出そうとする女の子を僕は全力で止める。
「えっ、でも」