願わくば溶けて
「それで逃げながら思わず泣いてしまって」
「そんな姿のまま家に帰ることもできず、ついつい……」
「ここに来たってわけですか?」
「うぅ、はい。すいません」
彼女は恥ずかしそうに顔を下に向け、おもむろに部屋の隅に行き
「ご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありません」
床に手をついて土下座をしてくる。
「いや、あの」
その姿を見た僕の額から汗が流れ落ちる。
…… 言いたいことが多過ぎる!!
あとこの光景も完全にアウトだろ ……。
僕はツッコミたい気持ちを必死で抑えて言っていい言葉に置き換えた。
「―― 別にいいんです。いいんですけど」
「せめて涙止めてから来て貰えません?」
「あと土下座はシンプルに止めて下さい」
僕は床に頭をつける彼女の腕を掴み土下座を強制的に止めさせる。