最初で最後の恋をする
「みやび、俺が教えてやる…」
そして、抱き締めたまま呟く。

「え?」
「みやびに“好き”って気持ち、教えてやる!」
腕を緩め、真っ直ぐ見つめて言った。

「厘汰…」
「だから、俺を信じてついて来い!」

「…………うん!」
厘汰の真っ直ぐな瞳に、みやびは大きく頷いた。



みやびの乗った車が去っていくのを見ながら、厘汰が武虎に言った。

「武虎」
「ん?」

「俺は最初で最後の恋をする!」

「わかってるよ!
久しぶりに見たよ、厘汰の本気。
まぁ、できる限り力になるよ!」

「あぁ、サンキュ」

「てか、厘茉のことは本気じゃなかったの?」

「従姉だしな。
大切な女だったけど、恋とは違った。
みやびへの想いと違うんだ」

「そう。
…………厘汰、覚悟はしてた方がいいよ!」

「は?」

「相手は、國枝財閥の令嬢。
本来、簡単に手に入る女じゃない。
それに毒牙を一番目の敵にしてるのは、國枝でしょ?
波牙と國枝は、同じ財閥でも天敵みたいなもんだし……
みやびの親父が、そう簡単に厘汰を受け入れると思えない」
武虎が、厘汰を見据え言う。

「あぁ、わかってる。
今から、波牙組に行ってくる」
「は?充矢(みつや)に会いに行くの?」


「あぁ!
必ずみやびを手に入れて、俺がみやびを幸せにする。人形になんかさせねぇ……!」




波牙組の事務所━━━━━━━

若頭である充矢は、厘汰の従兄で厘茉の兄だ。
そして、厘汰達の理解者だ。

厘汰を一目置いている、波牙組。
厘汰の為によく、力を貸してくれるのだ。

「厘汰、武虎!久しぶりだな!」

「充矢、頼みがある」

「へぇー、珍しいなぁ。
厘汰が僕に頼みなんて……!」

「俺と武虎を、◯◯大学に入学させてほしい」

「裏口?」
「まぁ、そうなるな。
みやびの傍にできる限りいる為には、まず大学に行くことが先決だ」

厘汰は、充矢に思いを伝える。

「やっぱ、出逢っちゃったか……國枝 みやびに」
「え?充矢?」

「いや、厘汰が仲間以外の為にこんな必死になるなんてなぁ。
…………厘茉が死んだあの時以来だな!
いいよ!厘汰には沢山世話になってるし。
……………お前には、幸せになってほしいしな……」

「は?」
「いや、何も」

「………??
サンキュ、充矢!よろしくな!」


「悪いな、武虎」
事務所からの帰り、ポツンと厘汰は言った。

「さすがに大学入学は、面食らった。
…………でも!付き合うよ!」
「………」
「ん?厘汰?」

「武虎、いい奴だな」

「は?今頃?
俺達、幼なじみ!」

「なんで、武虎は何でも俺に合わせてくれんの?」

「俺は、厘汰を人として好きだから」

「そうか」

「それに、罪があるでしょ?
一生かかっても償いきれない、罪」

「あれはもういいっつったろ!?
お前のせいじゃねぇよ!」
「でも、厘茉を殺したのは“俺”だよ」

「チゲーよ。
厘茉が勝手に喧嘩に飛び込んでったんだ。
もう、その話はやめろ!!
いいな!?」

「…………わかった」

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