最初で最後の恋をする
「みやび?」
「どうしたの?」

みやびは厘汰の服を握り俯いた。

少し前に四・五人の男子学生がいて、煙草を吸いながらゲラゲラ笑いたむろしていた。

「あいつ等、何なの?」
武虎がみやびの顔を覗き込む。

「みやび?大丈夫だから、言って?」
厘汰も頭を撫でながら言う。

「あの人達に…無理矢理連れていかれそうになったことがあるの。
たまたま近くにいた先生が助けてくれたんだけど、それから怖くて……」

「大丈夫だ、みやび」
「厘汰」
「俺達がいるでしょ?」
「武虎」

「みやび、俺を誰だと思ってんの?」

「厘汰?」
厘汰がみやびの手を指を絡めて握り、武虎もみやびを庇うように近寄った。

三人はゆっくり、学生達の横を通り過ぎる。

「あー、みやびちゃんだぁー!」
「やっぱ、可愛いよなぁー」
「ねぇねぇ!俺達と、遊んでよぉー!」
声をかけてくる学生を無視して、足を進める。

「えー、無視?」
「酷ーい!」
みやびの厘汰を握る手に力が入る。

「武虎」
「ん?」
「みやびを頼む」
「ん。お手柔らかにね~」
みやびと繋いでいた手をそのまま武虎に渡し、武虎がみやびの手を握る。

厘汰は一人で、学生達の元へ行く。

「え?り、厘汰!?」
「みやび、危ないから武虎といて」
振り返り微笑んだ厘汰。
学生達に向き直った。

「お前等、俺のこと知らない?」

「は?知るわけねぇじゃん!」
「そっか。
まぁ、みんながみんな知ってるわけねぇか!」
「は?何だよ、お前!」
一人の学生が、厘汰の胸ぐらを掴み凄んでくる。

厘汰は特に反応することなく、見据えていた。

「波牙 厘汰」

「は?」
「この名前は知ってる?」
「え……波牙って……ど、毒牙…の…?」
ゆっくり胸ぐらから手を離す、学生。

その手を素早く掴み、耳打ちする。
「━━━━━━一度だけ見逃してやる。
みやびは俺の女。
俺の女に手を出したら、どうなるかわかるよな?」

「す、すんません……」

「まぁ!そうゆうこと!」
厘汰は後ろ手に手を振り、みやびと武虎の元へ向かったのだった。

「厘汰!!だ、大丈夫だった!?」
「うん、ぜーんぜん!」
頭を撫でる厘汰。

「だって今、胸掴まれて…首がしまったんじゃ…」
「だから、大丈夫だって言ってるだろ?」
厘汰は安心させるように微笑んだ。

「ごめんなさい!私、足がすくんじゃって助けに行けなくて……」

「助けに……?
━━━━━━みやび!!」
「え……え?」


「いいか?
何があっても、俺を助けようなんてするな!!」

厘汰は声を荒らげ、みやびに詰めよった。
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