最初で最後の恋をする
「厘汰?」
「ちょっ…厘汰!!やめろ!」
急に詰めよられ、みやびはビクッと身体を震わせた。

「あ…わりぃ……
みやび、約束して?」
「え?」

「何があっても、俺を助けようなんてするな。
大丈夫だから………
俺は、絶対に殺られたりしないから。
わかった?」
「う、うん…」
厘汰の苦しそうな声に、みやびはゆっくり頷いた。


「何かあったの?厘汰」
厘汰がトイレに行き、みやびが武虎に問いかける。

「ある人を昔亡くしてるんだ、俺達。
その人、俺を助けようとして亡くなったんだ」
「そう…だったんだ……」

「だから厘汰は、必死に強くなって毒牙のカシラまで登り詰めたんだよ!
……………もう二度と、誰も傷つかないように…」


「お待たせ」
厘汰がトイレから戻ってくる。
みやびは無言で抱きついた。

「みやび?どうした?」
「厘汰」
「ん?」
「私も、厘汰から離れないよ」
「ん?何の話?」

武虎が簡単に説明する。

「あー、厘茉のことか…
みやび、ありがとな」
「うん…」


それから2時限が終わり、外に出た三人。

「━━━━みやび、いつも昼飯どうしてんの?」
「ん?冴木がお迎えに来てくれて、家で食べたり、何処かにランチしに行ったりしてる」
「今日も、待ってんの?」

「うん!だから、門に行こ?
何処で食べる?」

「学食で食べねぇの?」
「学食は、ダメって冴木が……」
「なんで?」
「さぁ?」

「汚ない学生にすぐナンパされるからですよ」

「え……?」
三人が声のする方を見ると、冴木が姿勢よく立っていた。

「みやび様、参りますよ」
「うん。厘汰、武虎も行こ?」

「みやび様、お父様が大切なお話があるとの事です。申し訳ありませんが、厘汰様と武虎様にはご遠慮いただきます」

「え?でも、まだ二人とお話したい!」

「みやび様!!」
「え?」
「今朝、僕が言ったこと、お忘れですか?」

「━━━━━━!!!?」
「さぁ、参りましょう」
「うん…
厘汰、武虎。
また明日ね!」
繋いでいた厘汰の手を離そうとする、みやび。

「待てよ!!」
しかし厘汰は、更に手を握りしめた。

「厘汰?離して!私、行かなきゃ!!」

「行きたくない。もっと厘汰といたい」
「え?」
「そう目が訴えてる。そんなみやびの手を離せるわけねぇじゃん!」

「厘汰…」

「厘汰様、ちょっとこちらへ……」
冴木が厘汰を少し離れた所へ誘導した。
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