最初で最後の恋をする
浴槽に浸かり身体を温め、ガウンを着て出るみやび。
なぜか、妙に意識してしまう。

「じゃあ…俺、行ってくる」
厘汰が浴室に入り、みやびはそわそわしだしソファの端っこに座った。

厘汰が浴びてるシャワーの音が妙に耳に響き、身体中が心臓になったようにドクドクと響いていた。

「みやび?」
「は、はい!」
「………」
「な、何?」
「大丈夫だ。誓って、なにもしない」
「わかってるよ」

「冴木に連絡した?」

「あ、まだ…」
「じゃあ、俺が連絡する。
みやび、説明できないだろ?」

「うん…」
スマホを厘汰に渡すと、厘汰が冴木に連絡する。

「━━━━━━ってことだから。
━━━うん。
━━━━あぁ、わかってるよ!」
通話を切り、みやびに返す。

「冴木、何て?」

「はぁぁ!?あり得ません!
ま、まぁ…みやび様が風邪を引くこと考えれば、僕も同じことするか……って、動揺してた」

「フフ…それ、冴木の物真似(笑)?」

「うん、一応…(笑)」
「フフ…」
「似てるだろ?」
「えーー!似てないよ(笑)」

「…………やっと、笑った」

「え?」
「みやび、ずっと…緊張してたから。
………って、当たり前だよな?
こんなとこ、緊張するよな?
いくら何もしないって言っても……」

厘汰が微笑み言う。
その厘汰の笑顔を見て、みやびの胸がドクンと跳ねた。

「………ありがとう…////」
そしてドキドキと、うるさく鳴り始める。

(何なの、これ……)


「テレビでも、見るか!」
「うん。
私、コーヒー入れるね。
そこに飲み物があるみたいだから」


「━━━━可愛い~」
「だな!」
テレビの動物番組を見ている、二人。

「小さーい!子どもの動物って癒されるね~」
「そうだなぁー!
…………あ、みやびに初めてあったパーティーあるじゃん」
「うん」
「あの時、茂みの奥に子猫がいたんだ」
「え?それで厘汰、茂みから出てきたの?」
「そう!」
「今はその子猫は?」
「逃げられたからわかんねぇ…せっかく、飼い主探そうとしてやったのにぃ(笑)」
「そうなの(笑)?」
「酷い子猫野郎だった(笑)」
自嘲気味に笑う、厘汰。

また、ドクンと胸が跳ねた。
(ほんと…何……?)

胸を押さえる、みやび。

「みやび?どうした?体調悪い?
まさか!風邪引いたんじゃ……!」
厘汰が慌てて、みやびの額に触れた。

「や!!」
思わず、その手を払いのける。

「え………みや…び?
わ、わりぃ…」

「あ……ごめんなさい…違うの!!
ドキドキして、どうすればいいかわからない……」
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