最初で最後の恋をする
「冴木」
「はい」
「成人したから、これからはお見合いの話が入ってくるわよね?」

「そうですね。しかし、まだ大学在学中ですのでそんな頻繁ではないかと」

「そっか」

「まだそんなに、構えなくて大丈夫ですよ?
みやび様は、パーティーを楽しめばよろしいんです」

「………うん」
みやびは車の窓を流れる景色を、ボーッと見ていた。


「ねぇ、冴木」
「はい」

「“好き”ってどんな感情?」

「━━━━━━━!!?
みやび…様?」
思わず、冴木の動きが止まる。

「私、そうゆう感情、よくわからないの」

「そうゆう感情は、言葉では表現できません。
みやび様が、ご自分で経験されて感じることですので」
一息つき、微笑みながら言う冴木。


「そうよね。冴木はわかる?“好き”って感情」


「わかりますよ。胸が苦しくなって、抱き締めて放したくないって思って、閉じ込めてしまいたくなります」

「………冴木?」

「え?あ、も、申し訳ありません!つい……」
「冴木にもいるのね。
そんな方が……!」
「いや、あ、その……」
「フフ…冴木が動揺してる(笑)」

「はい、いますよ」
その時の冴木は、今までになく優しい表情(かお)をしていた。

「そう。その想いが叶うといいわね!」

「はい。きっと叶えてみせます!」
「いいなぁー!
その方はどんな方?」

「そうですね。
とても可愛らしくて、純粋で……
本当は僕にはもったいない方です!」
冴木が優しい表情のまま語る。

「へぇー、会ってみたいなぁー!」
「みやび様も知ってる方ですよ?」
「え!?誰!?」

「“まだ”内緒です!」
「えーー!!」


そして大学に着き、ゆっくり車が止まる。

「じゃあ、ヒント!!」
後部座席から身を乗りだし言った、みやび。

「フフ…ダメです!」
冴木は微笑み言う。

「酷い!教えてくれてもいいでしょ?」

「フフ…
ちゃんと、みやび様にもわかる時がきますよ」
冴木は車を降り、後部座席のドアを開けみやびに手を差し出しながら言った。


「ふーん…
私も…そんな恋愛してみたいな……」
その手を小さく掴み、みやびは車を降りたのだった。

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