最初で最後の恋をする
中に入ると、広い空間が広がっていた。

「とりあえず、何か飲も?」
「うん…」

ソファに並んで座り、コーヒーを飲む。

「ねぇ、みやび」
「ん?」
「もう一回言って?」
「ん?何を?」
「俺のこと、何?」

「フフ…厘汰のこと、好き!」
「フフ…みやびのこと、好き!」

「厘汰」
「ん?」
「人を好きになるって、こんなに苦しいんだね」

「そうだな」

「でもね。
この胸の痛みも、幸せって思えるの」
みやびが胸を押さえ、微笑んだ。

「確かに!」


そして穏やかな時間が流れる。

沈黙が流れたり、微笑みながら話をしたり、ただ見つめ合ったり…………
幸せな時間が、流れていく。


「あ…飛行機雲……!」
厘汰の肩に頭を預けて、窓の外を見ていたみやび。
空を指差して言った。

「あーほんとだ!」
「綺麗…」
「空なんてあんま見上げたことねぇな」
「そう?
私はよく見るよ?
この前なんか、虹が出てたんだよ!」
「へぇー」

「あ!厘汰に出逢った夜の空は、スッゴく綺麗な星空だった!」

「そっか!」

「あの日の星空、絶対忘れない……!
あの星空が、厘汰に出逢わせてくれたんだよ、きっと……」

「フフ…」
「何?」

「いや、可愛いなぁと思って……」
厘汰がみやびに向き直り、頬を包み込んだ。

「フフ…」
「ねぇ、キス…していい?」

「うん…」
厘汰の顔が近づく。

しかし口唇が重なる寸前にピタッと止まる。

「厘汰?」
「………ベッド、行こ?」

「え?」
「今、キスしたら…多分、もう…止まんない……!」
「え?厘━━━━━」
みやびを抱き上げ、厘汰はベッドルームに向かった。

「ちゃんと掴まってて!」
「うん…」
みやびは厘汰の首に腕を回した。

「フフ…素直だ!」
「だって、嫌じゃないし」

ベッドにゆっくり下ろす。
そして組み敷いた。

「今度こそ、キスしていい?」
「うん。
…………ンンン…んぁ…」
厘汰の啄むようなキスが、首や鎖骨に移動する。

手が服のボタンにかかる。

「厘…ちょっ…待って……!」
「んー?やだよ…!
止まんないっつったじゃん!」

「シャワー浴びてな━━━━━」
「だからぁ!!」
みやびの両手首をベッドに縫いつけた。

「止まんねぇの!!
言ったよなぁ?
嫌がっても、縛ってでも抱くって!!」

それからみやびは、厘汰の狂おしい程の愛情を必死に受け止めていた。

厘汰が触れる手、口唇の感触、みやびの名を呼ぶ声………全てに苦しくて切ない、でも熱くて甘い愛情が感じられた。


二人がググッと繋がる。
二人の目から、涙が落ちた。


もう……何も望まない。
このまま、繋がったまま……なくなってもいい━━━━

そう思える程の、幸せなセックスだった。
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