最初で最後の恋をする
忍び寄る、虎
「おめでと!厘汰、みやび!」

武虎が嬉そうに言う。

「サンキュ」
「ありがとう!」
厘汰とみやびも、微笑んだ。

「みやび、親父さんは大丈夫なの?」
「うーん。あまりいい顔はしてないかな……」
武虎の問いに、少し悲しそうに答えた。

「そっか。波牙と國枝は天敵みたいなもんだもんなぁ」
「てか!みやびの親父が、一方的に波牙を嫌ってんだよ!」
「そうだね…」

「でもね。冴木が、言ってくれたんだよ。
“みやび様の思うようにしてください”って!
厘汰や武虎みたいに、自分で決めていいって言ってくれたの」

「そっか!よかったね!」
武虎が微笑み、みやびの頭を撫でた。

「うん!」

「武虎!あんま、みやびに触んなよ!」
「えー!いいじゃん!減るもんじゃないしぃー」

「フフ…二人は仲良いね~」

「まぁ、幼なじみだからな」
「そうなんだ!いいなぁー、幼なじみって」
「そうかなぁー。みやび、嫉妬してんの(笑)」

「あ、いや、そんな…////」

「フフ…可愛い~!」
武虎が微笑む。
「だから!武虎!みやびは、俺の!」
膨れる、厘汰。


この時間がずっと続けばいいなぁーと、みやびは厘汰と武虎を見ながら一人思っていた。

武虎とは、厘汰にとっても、自分にとっても、大切な友達でいてくれたらと…………




「花菱様。初めまして、私は國枝の秘書をしてます。館花(たちばな)と申します」

そんな時に、武虎の前に館花が現れた。

「國枝って、みやびの親父さんの?」
「はい。内密に、お話したいことがあります」

館花の運転で向かった先は、ホテルの会員制ラウンジ。
そこには國枝がいた。

「よく来たね。花菱の嫁さんにそっくりだな!」

「何ですか?
厘汰やみやびに黙って、みやびの親父さんに会うなんて、なんか……嫌な予感しかしないんだけど?」


「単刀直入に言おう。
俺は、回りくどいのが嫌いでね。
━━━━━みやびが欲しくないか?」


「は━━━━?」

あまりにも予想外の言葉に、武虎は固まっていた。

「我が娘ながら、これ以上ない女だと思うぞ」

「お断りします」

「何故?」

「みやびとは、これからも親友でいたいと思ってる。それに何より……厘汰を失いたくない」

「へぇー」

「俺からも、一ついい?」

「ん?」

「あんたにとって、みやびって何?」

「は?」

「やっぱ、人形?思い通りに動かせることの出きる人形」

「………」

「そうなんだ……みやび、可哀想…」
そう言って、ラウンジを出ようとする武虎。

「みやびは、たった一人の俺の生き甲斐だ」

「え……?」

「大事な娘を、波牙のようなとんでもない一族に嫁がせなくないと思って何が悪い!
お前に、親の気持ちがわかるわけがない!」
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