最初で最後の恋をする
「みやび」
「お父様、何?」

「久しぶりに今日、外食しないか?」

「え?うん!」

後日みやびは父親との外食の為、駅前で待ち合わせて冴木と共に待っていた。

「みやび、待たせたな!」
「ううん!
━━━━━━え……!?武虎?どうしたの?」

「みやび、今日は三人で食事しよう!」

「え?武虎も?」

武虎の表情が、心なしか固い。

何か、嫌な予感がする━━━━━━


「行くぞ!」
「武虎、どうしたの?」
みやびは、武虎に耳打ちした。

「みやび…ごめんね……」
武虎は謝罪の言葉を並べるだけだった。



「━━━━━みやび…波牙 厘汰とは別れて、ここにいる花菱 武虎と結婚前提に交際しろ!」

料亭の個室で、対当しているみやびと武虎。

「何を…言ってる…の…?」
みやびは信じられない思いで、武虎を見つめていた。

「武虎も、みやびを受け入れてくれるそうだ」

「え……武虎、冗談でしょ?
私は、厘汰が━━━━━」

「みやび!!俺を選んで?」

「武虎、どうしちゃったの?
あんなに、喜んでくれたでしょ?私と厘汰の交際。あんなに……」

みやびの目から涙が溢れ、武虎は見ていられない。
思わず、みやびから視線をそらした。
「……っ…」

「理由を教えて」
「みやび…」

「何か、理由があるとしか思えない」

今度は、見据えてくるみやび。
武虎はその、真っ直ぐな瞳を受け止めることができない。
あまりにも、真っ直ぐ過ぎて……


「みやび、母さんが死んだ理由……話したことあるだろ?」
そこに、父親が口を開いた。

「え?他に好きな人ができた……って…」

「あぁ…その相手ってのが、波牙 充矢だ」

「え……それって━━━━」

「厘汰の従兄だ」

「嘘……」


「充矢と母さんは、駆け落ちしようとして出ていった。でも……駆け落ちじゃなくて、心中したんだ」

「そんな……」

「でも、充矢だけ生き残った」

「………」

「厘汰は、充矢に似ている。
愛しすぎて、好きな女を殺す。
永遠に自分だけのモノにしようとして殺す。
そんな人間に、渡したくない。
冴木のことを男として見れないなら、武虎を愛する努力をしろ!」

「何、それ……お父様、言ってることめちゃくちゃ……
そんなの、無理!
やっと、本気で“好き”だと思える人に出逢ったのに、諦めろ?できるわけないでしょ!?
そんな、簡単な気持ちじゃない!!
武虎もなんとか言ってよ!」

みやびは必死に武虎に訴えた。

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