最初で最後の恋をする
「みやび、厘汰がなんで毒牙のカシラになり得たか知ってる?」

「え……」

「厘汰は、ある意味…人間じゃなくなる時がある」

「どうゆう意味?」

「キレると、まるで機械みたいに相手をなぶるんだ。ぼろぼろになるまで……
厘汰には、みやびに出逢うずっと前に愛する人がいた。
厘汰はただの憧れで、みやびが初めて愛した女だって言ってたけど、俺はその女のことも本気で愛してたと思ってる。
その女は、俺を守ろうとして死んだ。
その時厘汰がキレて、相手全員をなぶり殺したんだ。あんな厘汰、後にも先にも初めてだった。
だから、親父さんに厘汰は愛しすぎてみやびを殺すって聞かされた時、否定できなかった。
俺は、厘汰とみやびを失うくらいなら、俺がみやびを幸せにしたい。
厘汰を裏切ることになっても……」


「だったら、殺してもらう」


「え……」
「みやび、お前……何を…」
武虎と父親が、驚愕してみやびを見た。

「厘汰が好き!!
厘汰が好きすぎて、ここが!苦しいの!潰れそうなくらい痛いの!
今だって、会いたくて堪らない!
会って、ギュッて抱き締めて、キスをして、抱かれて、放れられなくなりたい!
それ以上、何も望まない!
厘汰と一緒にいれないなら、死んだ方がマシ!」

みやびは自分の胸を掴み、必死に訴えた。


“充矢くんが、好きなの!!
あなた、ごめんなさい!!
あなたとみやびを裏切ることになっても、充矢くんと一緒にいたいの!
充矢くんと一緒にいれないなら、死んだ方がマシ!!”


みやびの言葉を聞いて、父親の脳裏にあの日の妻が重なった。


「みやび…お前は……ほんとに……」


「奥様にそっくりですね!」
個室の襖が開き、冴木と厘汰が立っていた。

「みやび、話は聞いてた!
大丈夫。俺が死なせないよ!
だって、ずーっと一緒にいたいんだもん!」
「厘汰!!」

みやびは厘汰に向かって駆け出した。

テーブルの足に、躓き“また”厘汰が抱き止める。
「もう!!躓きすぎ(笑)!!」

「厘汰、厘汰、厘汰、厘汰、大好き、大好きだよ!!」

「うん!みやび、大好き!」


「花菱くん」
國枝が、武虎に向き直る。

「誠に勝手だが━━━━━」

「みやびとは、結婚できません!」

「花菱くん」

「俺は、厘汰とみやびカップルが好きです!」

武虎が國枝を見据え、言い放った。


「フッ…ありがとう!
━━━━━みやび」
微笑んだ國枝は、みやびに向き直った。

「はい」
「勝手にしなさい!
その代わり、幸せになりなさい!」

「はい!」
< 30 / 31 >

この作品をシェア

pagetop